今回は、蒸留塔の運転方法の中でも、「内部還流制御」について解説してみたいと思います。
内部還流とは
蒸留塔における還流とは、塔頂で発生した蒸気を凝縮器で凝縮させ、凝縮液の一部を塔頂に戻すことです。還流をかけることによって、昇ってくる蒸気と流下する液が接触して熱交換することができ、蒸気側に低沸点成分が、液側に高沸点成分が濃縮していきます。
単に「還流量」というと、塔頂に戻す凝縮液の流量を示すことが多いと思います。この還流量のことを、本記事では内部還流との区別のため「外部還流」量と表記します。
一方で内部還流量とは、『蒸留の理論と計算』によると、
精留塔の1断面において塔を流下する液量
のことです。
外部還流量が塔の外部から塔内に戻し入れられる液流量であることに対し、内部還流量は塔内を実際に流下する液流量を示します。
内部還流量で制御する利点
実際の運転状況や分離効率を左右するのは、塔内での気液接触の指標となる「内部還流量」のほうです。分離工学の教科書で蒸留塔の設計をするときも、計算に出てくるのは内部還流量(よくLで表される)であり、外部還流量は出てこないですよね。
よって、内部還流量を一定にするような制御をしたほうが、運転や品質が安定すると言えます。
しかしながら、内部還流量は直接測定できません。外部還流量なら、流量計で測定できるのですが…
内部還流量の計算方法
内部還流量は、外部還流量とその他いくつかの変数を用いて、下記の式で表すことができます。
内部還流量 = 外部還流量* (1+Cp * (Ttop – Tsubcool) / Λ)
ここで、
- Cp 外部還流の比熱 [kJ/kg・K]
- Ttop 塔頂の温度 [℃]
- Tsubcool 外部還流の温度 [℃]
- Λ 塔頂蒸気の蒸発潜熱 [kJ/kg]
を示します。(単位は次元が合えば何でも良いのですが、一例を示しました。)
さて、この式は何を意味しているのでしょうか?
ここで塔頂における塔内の様子を想像してみます。塔頂に外部還流が流れ込むと、塔頂より1段下から昇ってきた蒸気と接触して、その蒸気と熱交換し、蒸気の一部を凝縮させます。
凝縮液が冷たければより多くの蒸気を凝縮させ、飽和温度に近ければほとんど凝縮させないことになります。
外部還流(Tsubcool)が塔頂の温度(Ttop)まで温度上昇するときに奪う熱と、塔内の蒸気が凝縮するときに奪われる熱がイコールになるので、上式で塔内の蒸気がどれだけの量凝縮するかを計算することができる、ということです。外部還流量と凝縮した蒸気の量を足し合わせれば内部還流量になります。
制御に組み込む際の注意点
上式の中で、塔頂の温度Ttopと外部還流の温度Tsubcoolは温度計で測定することができます。一方で、比熱Cpや蒸発潜熱Λは組成や温度によって変化するものですので、制御に使うときは、温度の関数で表すとか、ある仮定(組成一定など)のもとで固定値にする工夫が必要になりますね。組成が大きく変動するような蒸留塔で適用するのは難しいかもしれません。
内部還流制御に関するWEB上の情報
これまで内部還流制御についてお伝えしてきましたが、かなりの部分下記のサイトを参考にしました^^;
著者の身元もわかりますし、こちらを読んだほうがずっとためになる思いますが、、、日本語で&より噛み砕いて書いてみました。
また、下記の文献(海外文献の日本語訳)も大変詳しく、参考になりました。
おわりに
今回は、初めて技術的な記事を書いてみました。
「内部還流制御」といいつつ、制御の安定性などの計装的な観点がすっぽり抜け落ちております……また、間違いなどあると思いますので、お気づきの点があればツッコミ、アドバイス、いただけますと大変勉強になります。ぜひお願いいたします。
ご安全に!
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